初級ウミガメ学概論

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目次

 

第1章 ウミガメのスープの定義

1-1 シチュエーションパズル

1-2. ウミガメのスープの定義

1-3. 水平思考との関連性

 

第2章 ウミガメのスープの構成

2-1. ウミガメのスープにおける問題文

2-2 ウミガメのスープの目的

2-3 ウミガメのスープにおける解説

2-4 ウミガメのスープにおける質問

 

第3章. 問題要素

3-1 四大要素

3-2 問題分析の観点

 

第4章 問題要素 チャーム

4-1 定義

4-2 参考

4-3 チャームの分類

 

第5章 問題要素 クルー

5-1 定義

5-2 役割

5-3 クルーの分類

5-4 クルーの関連要素

 

第6章 問題要素 ベール

6-1 定義

6-2 役割

 

第7章 問題要素 トリック・アイデア

7-1 定義

7-2 役割

7-3 分類

 

第8章 その他観点

8-1. 観点の広がり

8-2 ウミガメにおける観点の具体例

 

第9章 総括

 

第10章 付属資料

 

第11章 参考

 

 

 

第1章 ウミガメのスープの定義

 本稿「初級ウミガメ学概論」は、インターネットサイト「ラテシン」等で行われている対話型ゲーム「ウミガメのスープ」(以下ウミガメ) に関しての考察である。

まずはこの「ウミガメのスープ」がどのように定義されるかを考察する。

 

1-1 シチュエーションパズル

 一般に、ウミガメのスープはシチュエーションパズルと同義、またはその一種であると解釈されている。

シチュエーションパズルは、一人が問題を出し、他の人はYES/NOで答えられる質問をすることにより、出題者の定めた状況、物語等を明らかにするゲームである。

平たく言えば、YES/NOで答えられる質問を重ね、出題者の当てて欲しいことを当てるゲームと言える。

特定のサイトにおいてローカライズされたシチュエーションパズル、本家「ウミガメのスープ」と同タイプのシチュエーションパズルという定義なども考えられるが、本稿では本質的にウミガメのスープとシチュエーションパズルに違いはないと考え、これら2つをほぼ同義の言葉と見なしてウミガメのスープを定義する。

 

1-2. ウミガメのスープの定義

 ウミガメのスープの定義は厳密に定められておらず、共通認識としての普遍的なものがあるわけでもないため、これは非常に難しい問題である。

ウミガメのスープ愛好者においても、各個人が感覚的に理解している、ないし、定義については特に気にしていないような場合が多いのではないかと考えられる。

本稿では、シチュエーションパズルと同義のゲームとして、以下の定義を取ることとする。

「出題者が問題を出し、他の参加者が問題文の情報を基に、YES/NOで答えられる質問をすることによって、出題者の定めた状況・物語・理由・方法・物などの解答を明らかにするゲーム」

ただし、問題文の情報に乏しくほぼノーヒントな物当てである古典的な20の扉、質問に対する回答の正確さが保障されない亀夫君問題、また、YES/NOで答えられる質問以外も必要とする新ジャンル問題などは除外し、本稿の扱う対象に含めない。

一方、出題者の定めた解答が状況であるか物であるかに本質的な差はないと考え、現在のルール下での20の扉の一部もウミガメのスープとして扱う。

 

1-3. 水平思考との関連性

水平思考とウミガメのスープは関連して語られることが多い。

しかしながら、水平思考の定義が共有されていない事も相まってか、これらがどのように関連しているかを論じている場面はそれほど多くないと思われる。

本稿では、まず、水平思考を

『新たな視点で物事を捉えることにより問題解決を試みる思考法』

と定義する。

その上で、英語版wikipediaに近い解釈であると思われるが、

ウミガメのスープにおいて解答を導くためには、水平思考が必要とされる場合がある」

という関連性を取る。

すなわち、必ず必要という訳でも、全く不要という訳でもなく、場合によっては必要になるものというスタンスである。

これは何もウミガメに限ったことではなく、セオリー (最善手) が決まっていないあらゆるゲームにおいても同様だと思われる。

ただ、ウミガメに関しては、YES/NOで答えられる範囲で任意の質問が可能であり、ゲームにおける行動の自由度が極めて高いこと、また、出題者が意図的に水平思考を要求する (特定の視点を必要とする) 問題を出す場合があることなどから、水平思考の重要性が高まるものと思われる。

同様に、自由度の高いTRPGや、ある程度観客の予想を越える必要のある即興コントなどでも水平思考は重要になるものと思われる。

実際に、ウミガメに水平思考を求める者も多く、定義的に必須ではないものの、ウミガメが有する要素の1つではあると考えられる。

 

 

第2章 ウミガメのスープの構成

本章では、一般的なウミガメのスープを構成する『状況』『問い』『解説』の3つの構成要素について述べる。

このうち、『状況』と『問い』は問題文に含まれるものであり、『解説』は解説文そのものある。

 

2-1. ウミガメのスープにおける問題文

(本稿では、ゲームの形、システムとしてウミガメのスープを定義したため)ウミガメのスープにおいて、最低限の情報が問題文に記載されていれば、基本的には問題はどのようなものでも良い。

最低限の情報としては、主に『状況』と『問い』の2つであり、『問い』が隠されている物や、『状況』とは呼べない叙述から成る物はウミガメには含めないこともある。(新ジャンル等とされる)

【状況】

問題文において描写されている事柄。

例えば、不思議に思える状況であったり、繋がりの不明確な複数の事柄であったり、物語の一部分や、状況が容易には理解できないように比喩や暗号などの記述であったりする。

これら問題文で叙述された状況を初期に与えられた情報とし、これに対応する『解説』を導くことになる。

【問い】

その問題が何を目的としているのかを定義する、参加者への問い掛けの部分。

一部の例外を除けば、この部分はメタ的な参加者へのメッセージ (問題のルールに近い) として扱われる。

よく見られるものには、一体なぜ?(理由を問うもの) や 状況を説明して下さい (状況の説明を求めるもの)、一体どうやって? (手段を問うもの) が挙げられる。

これらの問い掛けへの十分な答えが提示された時、その問題は解決したとして終了となる。

 

近年では、「状況」をタイトルに持ってくるものや、「問い」とヒントのみから成るような問題文も見られるが、それらは特別な例外である。

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ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました。
何故でしょう?

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例えば、本家ウミガメのスープにおいては1~5行目までが「状況」の描写、6行目が「問い」である。

これら問題文で与えられた状況と質問を用いて、問い (問題) に答える (解説を当てる) のがウミガメの目的である。

 

2-2 ウミガメのスープの目的

上記のように本質的にはどのような問題でも良いのであるが、YES/NOで答えられる質問をするという本ゲームの特徴から、一般的には以下のような「状況の解明」「理由の解明」「方法の解明」を目的とするものが大半である。

 

「状況の解明」

問題文に書かれた状況を説明する。

どこまで細かく説明する必要があるかは出題者によるが、基本的には「問題文の描写をすべて満たす状況を作る」「問題文の表現を一般的な(文章として自然で分かりやすい)ものに直す」の2点を抑え、かつ、「出題者の定めた状況と概ね一致している」ものを求めさせることが多い。

「謎解き」と呼ばれる、一般的には説明できないような状況 (謎) に対して、これを説明できる解を導くというタイプも存在するが、いくら解が出来てもそれが出題者の用意した解説と一致しない限り正解にはならないため、「謎解き」も状況補完の一種であるとみなせる。

出題者の用意した解説と異なるが、解にはなる物は「別解」と呼ばれる。

 

「理由の解明」

状況だけは与えられているが、理由が明確でない事柄に対して、理由を説明する。

多くの問題文の最後は「一体なぜ?」となっているが、直接的な理由を解明しただけではFAにならないものもあるため、状況当ての要素が強いものも存在する。

こちらも状況解明と同様に出題者の用意した理由でないと正解にはならない。

 

「方法の解明」

状況と結果が示された事柄に対して、それを行う手法を説明する。

How系とも呼ばれる、比較的数の少ない問題タイプである。

情報の欠落が大きい場合や、手法だけではFAにならない問題の場合は状況の解明が主になる場合もある。

こちらも状況解明と同様に出題者の用意した手法でないと正解にはならない。

 

2-3 ウミガメのスープにおける解説

 「解説(文)」は問題の解答になる部分であり、出題者の定めた状況・物語・理由・方法・物などが書かれている。

例えば、状況当てならその具体的な状況、理由、手段当てならそれぞれその理由、手段である。

また、場合によっては付加的な物語や装飾、出題者からのコメントなどが盛り込まれている場合もある。

「問い」の解答となる部分は必ず記述されている必要があるが、問いの答えを端的に「解説」にするか、付加価値を付けて「解説」にするかは出題者次第である。

 

2-4 ウミガメのスープにおける質問

 YES/NOで答えられる質問で、その問題を解くのに利用出来得るのであれば、質問の内容は基本的に自由である。

逆に、YES/NOでは答えられないような質問は出来ない。

○「彼は野球選手ですか?」「YES チームのエースでした。」

×「彼の職業は何ですか?」「(YES or NO では答えられない)」

また、1つの質問で複数のYES/NOを要求する (「彼は野球選手ですか?彼はトムの飼い主ですか?」等) ことは禁止されている場合も多いため、1つの質問は1つのYES/NOで答えられるものを選ぶのが良い。

質問はウミガメの重要な構成要素であり様々なものがあるが、本稿では割愛する。

 

 

第3章. 問題要素

本稿では主に「状況当て」系のウミガメのスープを対象にし、問題の考察を行う。

これは、「状況当て」系は最もよく見られ、また、理由、方法当ても広く見れば状況当てと見なすことも出来るため、ウミガメのモデルとしては最適であると考えられるためである。

この際に用いる分析手法として、本章では「四大要素」を用いる。

 

3-1 四大要素

基本的にウミガメ問題は「状況」、「問い」、「解説」の3つが適切に揃っていれば成立するため、問題は非常に多様なものとなる。

それゆえ、分析・分類の観点を定めることは容易ではない。

現状では、ウミガメのスープを論じる場合、その観点はしばしば「チャーム」「クルー」「ベール」「トリック」とされ、これらは四大要素と呼ばれる。

これらの観点は要素、レベルとしては全くバラバラ (例えば、スープにおいて「材料」「人気」「価格」「カロリー」と言った感じ) であり、体系的とは言い難いものであるが、無理に同じレベルで観点を設定するより、レベルはバラバラであっても効果的な観点を設定するのが実用的であるという理由から、便宜的にこれらが使われているものと思われる。

例えば、ラーメンの比較紹介記事において、成分という括りで「脂質・糖質・タンパク質・ミネラル・ビタミン」の含有量を書かれるよりも、観点はバラバラでも「スープの味・麺の太さ・価格・店の立地・外観」などを書いたほうがよっぽど有用であろう。

 

3-2 問題分析の観点

当然ながらこれらの観点は、問題において重要な要素という面から任意で設定しただけに過ぎない為、他にもいろいろな観点から要素が設定できる。

実際に、この他に「納得感」「物語」「言葉遊び」「斬新さ」といった評価点をベースにした要素や、上記4種を細分化または統合したものなども見られる。

また、「問題文の謎分類」や「水平思考要素による分類」なども可能である。

本稿の目的はウミガメのスープをより深く知り、考え、理解することであるため、それがウミガメのスープに重要であれば観点は多様な方が良いが、あくまで「初級ウミガメ学概論」である。

このため、一般的な観点に絞ることとし、最も汎用されていると思われる四大要素をベースとして各論の内部での細分化という形で考察を行うこととする。

なお、料理のスープにおいて「材料」や「人気」が「価格」に影響を与えるように、要素は独立ではなく相互関係がある。

可能であればこれらの相互関係や各要素の位置づけに関しても記述するべきであるが、非常に複雑になるため、最小限の部分をそれぞれの章で触れるにとどめた。

 

 

第4章 問題要素 チャーム

 

4-1 定義

広くは 「(解説を含めない) 問題に感じる魅力」とされる場合が多いが、チャームの範囲は人によって様々であり、問題における謎の深さだけに限定される場合から、出題者のブランド、挿絵、出題タイミング、さらには、解説に至るまでの過程 (これを進行と呼ぶ) やその場の雰囲気も含めた問題の魅力に至るまで、かなりの広がりを持つ概念となっている。

極端に言えば、「解説が出るまでに参加者をどれだけワクワクさせたか」という定義になる場合もある。

 

これらは主に参加者の感覚に訴えかける要素であるため、「感覚要素」に分類される。

 

4-2 参考

本章に関しては、外部チャット『チャーム研究所』を参照されたい。

 

4-3 チャームの分類

-問題に内在するチャーム

-外因性チャーム

-進行チャーム

 

 

第5章 問題要素 クルー

 

5-1 定義

問題文中において、正解を導く上でのヒントとなる、手がかりとなる要素。

問題の構成に関わる点であるため、構成要素に分類される。

 

クルーは解説を導く上でのヒントであり、問題文中において解説の状況を示唆する、解説と関連性を持つ要素とも言える。

また、言い換えると、問題文において解説と対応している部分、解説が満たすべき条件とも言える。

特に形式は問われないため、名詞や形容詞などであることもあれば、全体的な文章表現がクルーとなる場合もある。

 

5-2 役割

クルーの役割は主に「正解を出すための手がかり(難易度の調節)」「解説状況の制限(別解の排除)」「(問題文と解説の対応関係をよくすることによる)納得感の向上」の3つである。

トリックやチャームとの関係も深いが、チャームに関してはクルーでもノイズでも(少なくとも問題文の時点では)関係ない為、これは結果的にチャーム演出とクルーが一致するだけと考えられる。

トリックは本質的に解説と関与するため、トリック要素がクルーになる場合も多い。

このため、「トリックの布石にする」という目的をクルーに入れるという見方もできるが、これはトリック要素の方が主体になるため、付加的な役割に留める。

 

  1. 「男は死んだ。 一体なぜ?」

(文の短さやシンプルさがメタ読みでクルーになる場合もあるが)この問題は基本的にノークルーである。

厳密には、前提状況としての「男」や「死んだ」をクルーにする場合もあるが、あまりに普遍的なのでここではクルーとしては扱わない。

ここで、「林檎を食べたので男は死んだ。 一体なぜ?」

になると、「林檎を食べた」はクルーになる。

「男が死んだ」という状況に関連している"ので"が付いているため、この「林檎を食べた」は「男が死んだ状況」と関連性がある可能性が高い。

まだまだ解説の可能性は狭まらないが、少なくとも「この林檎を食べたこと」が「男の死に関連する」という情報は得られる。(逆に林檎と全く関係ない解説はこの時点で弾かれる)

一方、

「林檎を食べた男は死んだ。 一体なぜ?」

これだと、「林檎を食べた」はクルーになるかわからない。

林檎と全く関係なく、交通事故で死んだ が正解かもしれないからである。(ノイズである可能性がある)

 

このように、正解と関連した情報がクルーであり、正解と関連しないものはクルーではない。

 

5-3 クルーの分類

【顕在化クルー】

問題のヒントとなるクルーで、解説に関係している、正解の方向を示すと思われる部分。

主に問題のヒント、および、別解の排除を目的に使われる。

 

【非顕在化クルー】

問題のヒントとなるクルーではあるが、ある程度状況が分かって来てからでないとクルーであると気づけない可能性が高い部分。

主に納得感の向上や終盤のヒントを目的に使われる。

 

5-4 クルーの関連要素

【ノイズ】

解説に至る上で大きな意味を持たない情報。

主に問題文の文章を整えたり、チャームを高めるのに使われる。

問題としては重要ではないのであるが、クルーがどこかを分かりづらくするため、これが多いほど基本的には難易度が上がる。

 

【トラップ】

解説とは違う方向に導くミスリード要素。

主に難易度を挙げたり、トリックを際立たせたりするために使われる。

解説とは異なる方向を指し示すことになるため、これが多いほど基本的には難易度が上がる。

ただし、正しく解釈すればヒントにもなりうるため、クルーを兼ねる場合も多い。

 

 

第6章 問題要素 ベール

6-1 定義

-定義: 正解に関連する情報のうち、問題文に記載されていないもの

問題の構成に関わる点であるため、構成要素に分類される。

 

広義には正解に関連する情報すべてを指すこともあるが、狭い意味では問題文の状況のうち明らかになっていない部分のみをさす場合もある。

状況当て系の問題では、一定の部分までベールが剥がされると正解になる。

言葉のニュアンス的には「正解」を包んで見え無くしているものという感じであると思われる。

一方、理由当て、方法当てにおける「正解(ズバリその理由、方法そのもの)」はベールに含めない傾向があるため、これらの問題では、ベールはほとんど残っていない(必要な状況は出揃っている)が、正解に至っていない状態もありうる。

このため、そもそも問題文に必要な状況、情報が全て揃っているような、いわゆる「ノーベール問題」が出題されることもある。

 

正解に必要な情報のうち、問題文に記載されているものがクルー、問題文に記載されてないものがベールと言える (厳密にはクルーはあらゆる手がかりを指す場合があるので、これがすべてではないが) ため、問題を作るにあたってはクルーとベールの選択、バランスなどが非常に重要になる。

これは元ネタ被りの問題などで容易に比較することができる。

 

6-2 役割

ベールの目的は主に「難易度の調整」「トリックやアイデアを成立させる」「チャームを作る」辺りに相当する。

そもそも、ベールは描写しないことによってつくられるものであるため、描写することで取り入れるトリックやチャームの裏側として常に機能しているものと思われる。

逆に、考察は表側であるチャーム、クルー、トリックなどとして行った方が効率的であると思われるため、詳細についてはそれぞれの各論に譲る。

 

 

第7章 問題要素 トリック・アイデア

7-1 定義

問題の構成に関わる点であるため、構成要素に分類される。

ここでは、水平思考要素として、トリックとアイデアをまとめて考察する。

 

【トリック』

トリックとは参加者に何らかの誤解、先入観、思い込み、勘違いを与えるための仕掛けである。

文章表現、単語のチョイスから出題時間、出題者などのメタ情報まで、あらゆるものがトリックとして利用され得る。

 

【アイデア

イデアとは、既存の概念を組み合わせて生み出された新しい概念 という定義をされることもあるが、ウミガメでは主に「正解に至るのに必要な発想・考え」および、これらを要求する性質を指す場合が多い。

 

トリックは主にメタ的な仕掛けである。問題世界中のキャラクターを欺く場合もあるにはあるが、本質的には問題外にいる質問者を欺かないと機能しない (問題世界の人間がいくら騙されていようと、質問者がそれを正確に理解していたら何の意味もない)。

 

一方、アイデアは主に非メタ(問題文世界内でのアイデア) 的な仕掛けである。

当然、メタ的なアイデアも数多く使われているが (例えば、単純な問題ではなく、付加的な意味合いや特殊な演出があるものなど)、それらは「斬新さ」や「洗練さ」等として捉えられることが多く、問題要素としてのアイデアとは異なる扱いを受けるのが一般的である。

 

7-2 役割

目的は「問題の難易度を上げる」という点もあるが、主に「参加者を楽しませるための水平思考要素」として用いられていることも多く、優れたトリック、アイデアはそれ自体に価値を持つと言える。

 

7-3 分類

トリックの主なものには以下のようなものがある。

 

「問題文の誤認」

特定の見方からの描写、情報を部分的に隠ぺいした描写、不親切な描写、果ては不正確な描写などによって文章の正しい理解を妨げるもの。

代表的には、文の主語・目的語を誤認させるものや、漢字の読みの違い (札:さつとふだ、金:かねときん など) を利用するものなどがある。

これらは時に叙述トリックなどと呼ばれることもあるが、下記の先入観トリックを含む場合が多く、そもそもネット上のウミガメはほぼ全て叙述により成り立っているため、正しく読みにくい文章のみを叙述トリックということは少ない。

 

「先入観」

ある事柄が暗黙の了解で他の事柄と関連付けられていることは多い。

例えば、「毎日家族のために働いて夜遅く帰ってくる会社員」は「男」だと思われやすいし、「ボールを蹴る」と言われれば「意図的にシュートする」と思われやすい (夜中に、散らかった部屋でたまたまボールに足が当たってしまったというシーンを想像する人はそれほどいないだろう)

このように、文章を読む時にはある程度勝手に情報を補完してしまうため、これらの関連付けを意図的に切ったような状況を作ってやれば読み手に誤ったイメージを与えることができる。

問題文そのものは正しく理解できているものの、読み手の思考を枠にはめることで思考の幅を狭めてしまうような仕掛けを先入観トリックという。

 

これらは「見ようとしなかった、考えようとしなかった領域」に相当する。

先入観さえなければ発想は出来た (「性別は男ですか?」や「何かの目的がありましたか?」という質問自体はそれほど特殊ではない) し、文章が正確に理解できていれば当然それを踏まえて質問が出来たと思われる。

無意識に、それは明らかだから質問する必要は無いと判断してしまっているものと思われる。

このような、考える領域の狭窄がトリックの効果であると考えられる。

 

一方、アイデアは言ってしまえば様々な発想、考え方などを指す言葉であり、分類するのは容易ではない。

例としては以下のようなものがあるが、潜在的にはあらゆる新たな発想がアイデアになりうる。

 

「登場人物が行う工夫」

一般的に使われる「アイデア」と近いもの。

登場人物が何らかの問題を解決するために使った発想を当てさせるもの。

ウミガメの中でも最も「水平思考」の要求度が高い形式の1つである。

逆に、既存の水平思考の実例をそのまま使えばこのようなアイデア系問題として仕立てることができる。

上記のような状況当て、理由当ての他、状況の揃った (ベールの薄い) 手段当て系問題はほとんど大部分がこれを軸にしていると思われる。

 

「物の見方の工夫」

一般的なものを、一般的でない視野、視座、視点で見たもの。

誰もが知っている状況を特殊な見方で描写することで不思議な状況に見せかける類の問題は状況当て系でしばしば用いられる。

具体例としてはネットのコピペでよくみられる「DiHydrogen MonoOxideやパンの危険性」が挙げられる。

どちらも極めてありふれた物質であるが、見方によってはひどく危険なものに見える (本来の目的は論理的思考力の欠如を揶揄することかもしれないが)。

 

これらは「見ようとしたが見えなかった、考えようとしたが考えられなかった領域」に相当する。

これに関しては色々な見方を試したり、新たな情報を手に入れて思考の方向性を定めていったりする必要がある。

このような、考えても中々考え付かない領域の形成がアイデアの機能であると考えられる。

 

 

第8章 その他観点

問題を考察、分析するにあたっての観点、要素となりうるものを特にその性質を考慮せず列挙する。

 

8-1. 観点の広がり

上述したスープの例で挙げると、「材料」「味」「栄養価」「値段」辺りが一般的な観点・要素であると思われるが、食の安全と言った観点からは「安全性」、レストラン経営からは「利益率」、お腹を減らしたレスリング部の学生からは「量」なんかが重要かもしれない。

さらには、「味」、「量」などと「値段」を組み合わせて「コストパフォーマンス」という観点を新たに作ることもできる。

このように物事を考察する上での論点、要素は立場や状況によって大きく異なると思われるため、今後の参考としてとりあえずストックしておくのが本章である。

使うかもしれないし使わないかもしれないし、何かと組み合わさったり、何かに統合されたり、何かの小分類に使われたりするかもしれない。

 

8-2 ウミガメにおける観点の具体例

・難易度

・物語性

・洗練さ

・言葉遊び要素

・文章表現

・謎

 

 

第9章 総括

 ウミガメのスープはシチュエーションパズルとほぼ同義のゲームであり、「」と定義される。

ウミガメは から成るが、その構成は自由度が高く、様々なものが存在する。

ウミガメの問題を作る上で重要な観点は四大要素と呼ばれる であり、それぞれ を表す。

その他にも種々の観点からウミガメは考察されており、今後も少しずつ変化していくものと思われる。

 

 

第10章 付属資料

【用語集】

『別解答』

正解とは異なるが、問題文の状況と矛盾しないもの、問題文の条件をすべて満たすものを「別解答」と呼ぶ。

潜在性とはこの「別解答」の多さのことを指す。

例えば、「男は死んだ。 何故?」という問題文であれば男が死んだ状況は全て別解答になりうるが、「男は全裸でバナナを握りしめたまま、外傷はなく、しかし、血にまみれて冷蔵庫の中で死んでいた。 一体なぜ?」という問題文であればこれらを全て説明できる状況を解説にしなければならず、その自由度は前者の問題よりも著しく低い。

前者の問題を潜在性の高い問題、後者を潜在性が低い問題という。

潜在性は狭義のチャーム同様、問題文のみに影響される。

 

『クイズ』

潜在性が最も重要になるのは、「クイズ・パズル」と「ウミガメ」の違いを論じる場合である。

クイズ・パズルは基本的には問題文に対応する解答がごく少数に限られており、常識的には1つに定まる物も少なくない。

一方、ウミガメでは問題文に対応する解答は通常多く、その中で出題者の定めたもののみが正解として扱われる。

 

 

第11章 参考